相続に関するコラムを執筆しております。ぜひご覧ください

img32038309

質問
父が亡くなりました。母はすでに2年前に他界しています。兄弟は私と弟と妹の3人です。父の生前、私たち夫婦が同居して暮らしていた父の名義の土地建物とわずかばかりの預貯金があります。遺言は作ってないようです。妹は遺産はいらないと言っています。私と弟だけで不動産や預貯金を相続する形で話を進めようと思うのですが、どのような方法があるでしょうか?

考えられる方法として、3つあります。1,妹さんの相続放棄、2,妹さんからの相続分譲渡、3,妹さんを含めた遺産分割協議です。

  1. 相続放棄
    まず、時期として、お父さんが亡くなってから、まだ3か月以上経っていないことが原則です。
    そして、妹さんが、お父さんが亡くなってから、何らかお父さんの遺産を取得していたりすると相続放棄はできません。ただし、生命保険金の受取人が妹さんになっており、妹さんが生命保険金を受け取っていたとしても、相続放棄はできます。受取人が具体的に指定されていた場合の生命保険金は遺産の取得ではないからです(税法上は別扱いですが)。
    以上の条件を満たしており、妹さんが相続放棄をする意思がある場合、妹さんが、お父さんの最後に住んでいた住所の管轄の家庭裁判所に相続放棄の手続きをすれば、相続放棄ができます。
    これにより、妹さんははじめから法定相続人でなかったこととになり、あなたと弟さんの二人だけが法定相続人だとして、遺産分割の話を進めることができます。
  2. 相続分譲渡
     妹さんが本来法定相続人として相続する相続分について、他の法定相続人に譲渡する方法です。遺産分割協議成立の前であれば、期間制限などなくできます。家庭裁判所の手続きを経る必要もなく、妹さんと譲り受ける相続人の相続分譲渡の旨を記載した書面(実印で押印し、印鑑証明書を用意する必要があります)で証明すればよいものです。
     もし、妹さんが、自分の相続分をあなたに全部譲渡するという意思であるならば、その旨の書面を作成することになります。この場合、上記①と異なり、妹さんの法定相続分の3分の1が譲受人のあなたに移るわけですから、あなたの相続分は全体の3分の2になることなります。この点が上記①の相続放棄と異なるところです。
     そして、弟さんと上記割合に基づく遺産分割協議を進めるということになります。
  3. 遺産分割協議
    結果として妹さんの取得分はゼロだとする内容の遺産分割協議を成立させ、これを書面化する方法もあります。すなわち、あなたと弟さんの取り分も含め、3人の兄弟で話がすぐつくようでしたら、3人で分割協議書を作ってしまえば、それで遺産分割の話は終わりになります。
     いずれの方法にすべきか、時期や他の兄弟の事情なども踏まえ、考えてみてください。