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1 不貞行為とは

 浮気のことを不貞行為ということがあります。不貞行為とは、配偶者がいるにも関わらず、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことです。これは離婚原因とされています。

自分が離婚原因をつくった方を「有責配偶者」といいます。浮気をした,つまり離婚原因である不貞行為をした配偶者は「有責配偶者」となり,基本的には「有責配偶者」からの離婚請求は認められません。

2 離婚が認められる3つの要件

 ところが,昭和62年に最高裁判所大法廷で一定の要件があれば、有責配偶者からの離婚請求でもこれを認める判例が出されました。それ以前は、「道徳を守り、不道徳を許さないことが方の最重要な職分である。すべて法は、この趣旨において解釈されなければならない」として、有責配偶者からの離婚請求は認めて来ませんでした。しかし、昭和62年の最高裁大法廷で言い渡された判例は、有責配偶者からなされた離婚請求でも、次の要件を備えていれば離婚を認める方向をうちだしたのです。

①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比に置いて相当の長期間に及んでいること。
②その夫婦間に未成熟の子が存在しないこと。
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれないこと。

 この判例後、有責配偶者からの離婚請求については、この3つの要件が一応の判断基準となっていますが、実務は次第に緩やかな適用になってきています。

(1)別居期間について

 別居期間について判断するのにあたっては数量的に対比するだけでなく、別居期間と両当事者の年齢及び同居期間、別居後の時の経過が与える当事者双方についての諸事情の変容などを勘案して、有責配偶者の離婚請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するというように変わってきました。そして7年半の別居で離婚を認めた事案も出てきました。しかし、別居期間が約8年という事案でも、「別居期間が相当の長期間ということはできない」として、棄却されている事案もありますので、何年別居していたら離婚ができるというような数量的な基準はまだ定まっていません。

(2)未成熟子の存在

 未成熟の子とは未成年とは異なります。裁判例などを見ると、大体「高校を卒業する年齢」くらいを上限としています。未成熟の子が居るという理由だけで有責配偶者からの離婚請求を排斥するべきではないと言う裁判例も出てきています。

 しかし、未成熟の子の年齢・生活などの状況によっても事情は異なりますが、未成熟の子の存在を大きな理由として、有責配偶者からの離婚請求を排斥する事案もまだまだ数多く有ります。事案の具体的内容で、離婚を認めても信義則に反しないと言う状態であることが離婚を認めるには必要となります。

(3)配偶者の社会的・経済的に苛酷な生活

 また、相手方配偶者が離婚により被る経済的不利益は、財産分与・慰謝料で解決されることも多いと思われますが、まだまだ女性が一般的に経済的な弱者である現実や、離婚によって社会的に形成してきた人的環境などが覆されることからみれば、この要件は必要です。婚姻届出後25年、別居後約16年間経過している夫婦の有責配偶者である夫からの離婚請求について、婚姻生活は客観的に破綻していても、離婚請求を容認すると、妻が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれることになるとして、離婚請求が棄却された事例もあります。

 浮気をしてしまった方からの離婚請求はなかなか難しいですが,将来のことも見据えて弁護士に相談してみるのも一法でしょう。