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当弁護士事務所では様々な分野を取り扱っていますが、その中でもご相談の多い離婚問題について取り上げたいと思います。

【質問】
夫が浮気していることがわかりました。浮気相手に慰謝料請求はできるでしょうか?

【回答】
慰謝料というのは精神的苦痛を慰謝するための損害賠償です。もともと精神的苦痛はお金では慰められないのですが、法律では慰謝料という形で解決することになっています。

では、何についての損害(精神的苦痛)かというと、「夫婦関係を破綻させられた」という損害です。

これを前提に、法律上、慰謝料の請求が認められるのは…

  1. 相手の女性が、あなたの夫が結婚して妻がいることを、知っている、あるいは知ろうと思えばすぐに知ることができた場合
    相手の女性があなたの夫を独身だとてっきり思っていたとしたら、もともと壊す対象である「夫婦関係」の存在を知らないのですから、わざと壊しているというにはならず(法律的には「故意」がない)、また、そのことについて過失(ちょっと考えたら結婚しているぐらいわかる)もなければ、慰謝料請求は法律上認められないことになります。
  2. その浮気までは夫婦関係が破綻していない場合
    単に夫婦の一方が浮気したら、もう一方は相手に慰謝料請求できるというものではありません。もちろん、夫に浮気をされて、あなたは感情的には害されているでしょうが、法律上保護されているのは、法律上の婚姻すなわち、「円満な夫婦関係」というのが日本の裁判例です。そうすると、たとえば10年以上別居状態で何の行き来もない夫婦だった場合、浮気によって破綻したとは言い難いと評価され、慰謝料請求は認められない可能性が高いのです。なので、「それまでは普通の円満な夫婦関係だったのに、浮気によって壊された」という事情が慰謝料請求には必要となります。
    反対に、相手からは、「もともとあなたたちの夫婦関係が破綻していたので関係ない」と反論されることもあり得ることを念頭に置いておきましょう。
  3. 夫婦関係が「破綻」している場合
     夫に浮気されても、特に夫婦の間柄は仲良く、これまでどおり円満な夫婦関係のままだとすると、「損害」としての「破綻」がないことになります。
     「破綻」の究極は「離婚」ですが、「離婚」までいかないにしても、離婚の協議が始まったとか、別居したとか、何らかの破綻を主張することになります。
     いわゆる美人局のような形での請求はいけないということです。
     そして、法律上の問題とは別に、もし、あなたが夫との夫婦関係を解消すべきか、修復すべきか、まだ悩んでいるとしたら、悩まされていること自体が法律上は「破綻」に追い込まれていると評価されますが、あなた自身の心の葛藤の問題を解決しておく必要があると思います。というのも、一方で、過去を水に流し、夫を許してあげようという気持ちを持ちながら、相手に慰謝料請求をするということは、夫が過去に自分をどれだけ裏切ったかを暴けば暴くほど有利になる手続きをすることになるからです。そのへんの心の整理も大切です。